ランビックとは?味わいの特徴やオススメのビールを紹介します!
投稿日:2020.06.27
こんにちは!
ハッピーアワーという文字にものすごいパワーを感じているCRAFT BEER TIMES編集部の熊倉です。
突然ですが、あなたは酸っぱいビールはお好きですか?
酸味のあるビールは総称してサワーエールと呼ばれていますが、この酸っぱいビールがクラフトビール業界で現在注目されています。
現在、特に流行しているサワーエールは、クラフトビールブームによって生まれた「現代的」な酸っぱいビールです。
一方で、昔ながらの「伝統的」な酸っぱいビールがあります。
それを代表するものがベルギービールのランビックです。
野生酵母を使ったワイルドで複雑な香りと強烈な酸味のあるランビックは、ビール界の中でもかなり異端なビアスタルです。
あまりにも癖の強い特徴を持つために好き嫌いは分かれるビールですが、ハマる人はとことんハマる魔性を秘めています。
というわけで今回はこの強烈な酸っぱさを持つベルギーの芸術的ビール・ランビックについて解説していきたいと思います。
- ランビックってどういうビール?
- どうやってつくっているの?
- おすすめのランビックが知りたい
このような内容が詰まった記事となっています。
ランビックは歴史が古く、ビールの面白さがたくさん詰まったビアスタイル ですので、ビール通には欠かせない必須とも言える知識です。
是非覚えておきましょう!
ランビックの概要
ランビックはベルギー・ブリュッセル近郊のみで作られている自然発酵ビールです。
自然界に生息する野生酵母などの様々な微生物によって発酵されるビールで、約500年以上も前からつくられていた記録が残っています。
自然発酵ビールは世界で最も古典的なビールの醸造方法で、ランビックはその代表的なビアスタイルとされています。
ランビックの名前の由来には諸説ありますが、ランビックを醸造していたブリュッセル近郊の都市レンベーグル(Lembeek)からきているとの説が有力です。
様々な微生物が長い年月をかけて生み出したランビックは、非常に強烈な酸味と複雑な香りが感じられ、世間一般に消費されているビールとは一線を画すような個性を持っています。
その強烈な個性から世界のビールマニアから熱狂的な支持を受けているほどのビアスタイルで、ビールの作り手である生産者たちからは古来から伝わるビールづくりの原点としてその醸造方法に高い関心が集められています。
知る人ぞ知るビールマニア向けのランビックですが、伝統の醸造設備や技術を用いたその製法は時代遅れと揶揄されることも少なくありません。
長い熟成期間が必要なことからもビジネスとして成立させることが難しく、伝統的なランビックの生産者は後継者不足に悩まされている現状があります。
ランビックの特徴
個性的なベルギービールの中でも特に珍しいとされているランビック。
ここではそんなランビックの特徴について解説していきます。
強烈な酸味
ランビックの最大の特徴が強い酸味です。
自然界の微生物によって生み出されるこの酸味は、初めて飲む人に非常に大きなインパクトを与えます。
しかしその酸味に慣れていくと、次第にその中にある豊かな旨味を見つけることができます。
野生酵母によって生成された様々な味わいを酸味の裏側に感じ取れるようになると、段々とランビックの美味しさの虜になってしまいます。
複雑で独特な香り
ランビックの香りは非常に複雑で、一言で表すことは決してできません。
フルーティーで華やかな香りがすると思えば、青カビチーズのような香り、ナッツのような香ばしさ、馬小屋とも呼ばれるような野生的な香りなどが感じられます。
特に野生的な香りについては「ファンキー」と表現されることもあります。
これらの香りは通常のビールに用いられる培養酵母とは異なる、自然界に存在する酵母や菌類たちによって生み出されます。
また、ランビックに使われるホップは3年以上熟成させたホップが使われますが、このホップは華やかな香りは失われており、チーズのような独特の香りがあります。
その土地でしか造ることができない
ランビックの醸造は微生物が全てと言っても過言ではありません。
生産者はビールづくりの環境を整えるだけで、ビールをつくるのは自然界の微生物たちの仕事です。
このランビックをつくりあげる微生物たちは、ベルギー・ブリュッセル近郊に流れるゼネ川付近に住み着いているとされています。
そのためランビックは他の地域では決して真似できない唯一無二のビールなのです。
ベルギー以外でもランビックの製法を用いたビールは生産されていますが、それらのビールはランビックとは名乗ることができず、それらのビールはランビック・スタイルと呼ばれています。
ランビックの作り方
ランビックは通常のビールとは大きく異なる手順で生産されるビールです。
ここではその自然発酵ビールの作り方について解説していきます。
使われる原材料や発酵の方法がかなり特殊ですので、ぜひ通常のビールの作り方とも比較してみてくださいね。
大麦麦芽と生の小麦で麦汁をつくる
通常のビールと同じく、まずは麦芽を煮込んで麦汁をつくります。
ランビックに使われる麦芽は大麦麦芽がメインで、30%は麦芽化していない小麦が使われます。
麦芽化していない生の小麦には、通常の酵母では消費することのできない比較的大きな炭水化物が含まれています。
野生酵母や乳酸菌はこの大きな栄養素をエネルギー源とすることができるので、ランビックには生の小麦が使われているのです。
熟成されたホップを添加
麦汁が出来上がったらホップを加えてさらに煮込みます。
ランビックには約3年間熟成させたホップが大量に使われます。
このホップには華やかな香りや苦味はなく、防腐効果のみが残っています。
熟成ホップを大量に使う理由は2つあります。
ひとつはランビックの発酵による複雑な香りや酸味を邪魔しないため。
もうひとつは長い発酵と熟成期間に耐えうるための強い防腐効果を得るためです。
自然界の微生物たちを取り込む
ホップが添加された麦汁は、クールシップと呼ばれる広くて浅いプールのような容器に移されます。
こうして麦汁は表面積を大きくした状態で一晩かけて冷却が行われ、野生の微生物たちが麦汁の中に入り込むのを待ちます。
このときに醸造所の窓は解放され、風に乗って酵母や乳酸菌たちはやがて麦汁の中へと住み着き、発酵が始まります。
ちなみに現代の通常のビールは熱交換器という機材を通って瞬時に冷却され、ステンレス製のタンクに移されることがほとんどです。
そして培養された酵母を適量加えられたのちに発酵が始まります。
ランビックに使われる微生物たちは、ブリュッセル市を北から南西へと流れるゼネ川周辺に生息しています。
また、醸造の時期は好ましく無い微生物の混入を防ぐために10月〜5月の涼しい期間に行われます。
木樽での発酵・熟成
酵母や乳酸菌が住み着いてある程度発酵が進んだランビックは、木樽に移されてさらなる発酵・熟成が行われます。
木樽の中は野生酵母たちの住処となっているため、樽の中のビールはより複雑な変化を遂げていきます。この熟成期間は約1〜2年ほどと長期に渡ります。
ランビックには主に以下の様な微生物が使われています。
ブレタノマイセス酵母
いわゆる野生酵母。活動は穏やかですが、通常の酵母が食べられない大きな糖分を消費できるので、ブレタノマイセス酵母で発酵させたビールは辛口に仕上がります。
馬小屋や獣臭と呼ばれるような独特な香りも、このブレタノマイセス酵母が生み出しています。
ラクトバチルス
乳酸菌の一種。
ヨーグルトに使われる乳酸菌で、麦汁の糖分を消費して酸味を生み出します。
ペディオコッカス
乳酸菌の一種。
こちらも強い酸味を生み出します。ペディオコッカスはビールに粘り気を与えるデメリットがありますが、ブレタノマイセス酵母がこの粘りを食べてくれる補完関係ができています。
瓶詰後の熟成
発酵が終わったランビックは、たいてい年代の違いものをブレンドした後に瓶詰めされます。瓶詰め後は温度の安定した地下室に移され、半年間以上の熟成が行われます。
ランビックは非常に長い期間熟成することができるビールです。
その理由は、野生酵母によって糖分が限りなく食べ尽くされている状態と、強い酸味のおかげで他の菌が生きていけない環境になっているからです。
また、ランビックの酸味は熟成することによって和らいでいくため、年代物のランビックほど味わいはまろやかになっていきます。
ランビックの種類
ランビックの中にはいくつかの種類があります。
代表的なランビックのタイプをまとめたので、ここでチェックしていきましょう。
ストレートランビック
樽詰めされ3年間熟成されたランビック。
非常に強い酸味と強烈な香りがあります。ストレートで飲むランビックはあまりにも強烈なため、そのままで飲まれることは少ないです。
グーズ
年代物のランビックと若いランビックをブレンドした後に瓶詰めされ、数年熟成させたランビックです。
ブレンドの割合は醸造所によって異なりますが、大抵は若いランビックが70%、年代物のランビックが30%の割合です。
「ビールのシャンパン」とも呼ばれ、強い酸味がありながら程よくフルーティーで、バランスの取れた丸みのある味わいがあります。
世界に流通しているランビックの中で最も多いのがこのグーズです。
フルーツランビック
フルーツを漬け込んで熟成させたランビック。
フルーツと合わさることで甘さが加わり、果実のフレッシュな酸味とランビック本来のドライな酸味がうまく混ざり合います。
漬け込まれるフルーツは様々で、サクランボやフランボワーズ、カシス、モモなどがよく使われます。
ファロ
若いランビックに砂糖を加えた後に加熱殺菌し、微生物の活動を止めたものです。
甘さが足されており、発酵が止められて酸味や独特の香りが抑えられているため、比較的飲みやすい味わいのランビックです。
CRAFT BEER TIMES編集部が選ぶオススメのランビック5選
ランビックがいかに特殊で複雑なビールかはお分かりいただけましたでしょうか?
お勉強の後は実践!ということでCRAFT BEER TIMES編集部のオススメするランビックをこちらでご紹介いたします。
百聞は一飲に如かず!ぜひ気になったものは試してみてください。
1. カンティヨン「グーズ」
伝統の製法でつくられた正真正銘のランビック。
酸味は強いですがその他に感じられる複雑な香りと旨味が楽しめます。
2. BOON GEUZE(ブーン・グース)
香ばしさとコクのある酸味が特徴。
強い味わいがありますがフルーティーな爽やかさも感じられます。
3. ヴァン・ホンスブルック醸造所「グーズ フォン トラディション」
フルーティーではじける酸味が楽しめるランビック。
フレッシュ感がありながらも熟成の香りがしっかりと感じられるバランスが魅力です。
4. BOON KRIEK(ブーン・クリーク)
熟成させたランビックにさくらんぼを大量に漬けこんだフルーツランビック。
酸味とともに感じられるサクランボの風味と甘味がバランス良く、初心者にも飲みやすいランビックです。
5. リンデマンス「ファロ」
キャンディーシュガーを加えて甘みをつけたファロスタイル。
酸味と甘味のコントラストが秀逸な甘味が強いタイプのランビックです。
まとめ
今回はランビックについての解説をさせていただきました。
数あるビールの種類の中でも群を抜いて特殊なビアスタイルでしたね。
ということでランビックの特徴を最後に振り返りましょう。
- ランビックはベルギー・ブリュッセル郊外でのみつくられる自然発酵ビール
- 野生の酵母や乳酸菌の力によって、強烈な酸味や野性的で独特な香りが生まれる
- ランビックは熟成したものと若いものがブレンドされるのが一般的で、フルーツや砂糖を加えて飲みやすくしたタイプもある
ランビックの個性的な味わいは、良い意味で一般のビールとかけ離れていきます。
初めて飲んだ時にはわたしもあまりの酸っぱさとクセのある香りに「これ…飲んだらダメな奴じゃね?」と思いました。
ですが今ではあのガツンとくる酸味と馬小屋の香りにすっかり魅了されてしまっています…
ランビックにはクラフトビールマニアを虜にする魔性が秘められています。
これを読んだあなたも一度でいいのでぜひランビックにチャレンジしてみてくださいね。
好き嫌いは確実に分かれるビールですが、既存のビールの概念が吹っ飛ばされる体験ができること間違いなしです!
わたしはすでにこちら側の世界で待っておりますので…(笑)
それではまた!