IPAとは?IPAの特徴や種類、オススメのビールを紹介します
更新日:2021.01.22 / 投稿日:2019.07.01
このまえ同期と行ったお店、クラフトビールばっかで全然わからなかったな〜。
みんなが飲んでたの、あれ何だっけ…。PTAじゃなくて、TPPじゃなくて…
どーもー、IPAでーす。
あ、それそれ!アイ・ピー・エー!
…え、ていうかこの声は…?
僕だよ、僕。IPAくんだよ。
このまえお店で僕のこと見てたよね。
あの時なんで飲まなかったの??
(ビールが喋ってる…)
えー…あ、飲んでみたかったんだけど、クラフトビールのこと知らなくって。
ていうか、ビールがしゃべっ…
あぁ〜、だと思ったっ!
それなら僕がIPAのことを教えてあげるよ!
“知って美味しいIPAの世界”へレッツゴー!
こんにちは!
ハタチになって初めて飲んだビールがオレゴン州のIPAだった、クラフトビールタイムズ編集部のYukoです。この頃は初夏らしく軽やかでさわやかなセゾンを楽しんでいます。
さて、このコーナーではCRAFT BEER TIMESキャラクターのビア助くんのように「せっかくビールを飲むなら非大手のこだわりのものを飲みたい…。でも何を選んでいいか分からない…。」というような“クラフトビールビギナー”さんに向けて、多彩で、自由で、創造的なクラフトビールの世界をわかりやすくご紹介していきたいと思います。
今回は、ガツンと効いた苦味とさわやかな香りでアメリカを初め世界中の若者に熱狂的なファンが多い「IPA = アイ・ピー・エー(インディア・ペール・エールの略称)」というスタイルについて詳しく解説して参ります。
どうぞよろしくお願いします!
IPAの歴史
IPAが生まれたのは遡ること18世紀のイギリス
18世紀当時のイギリスでは、国中で流行っていたペール・エールという淡色麦芽スタイルのビールを、植民地のインドに輸出していました。
しかし、イギリスからインドまでの海上輸送は約6ヶ月にも及ぶもの。激しい波の揺れや、気温の変動によって、国内では美味しかったはずのビールの味が劣化してしまいました。
「インドに滞在しているイギリス人労働者にも美味しいビールを飲ませたい!」という醸造家たちの思いから、航行に耐えるための改良を施して生まれたビールがIPAでした。
IPAの“I”はインドの“I”だったんだ!発祥地はイギリスだなんて想像もしてなかったよ。
IPAとはどんな改良を施したビールなのか
当時、東ロンドンでビール醸造家として独自のビール(「オクトーバービール」という商品)をインドへ輸出していたジョージ・ホジソン氏が、イギリスからインドへの輸送中に起きる腐敗問題を解決するために施した改良が、ビールのアルコール度数を高めることと、抗菌性のあるホップを大量に投入することでした。
その結果、半年にも及ぶ航行を経てインドの地にたどり着いたビール(のちのIPA)は、現地の消費者に「美味い!」と大好評だったそうです。
海の向こうでの評判を聞いたイギリス国内の醸造家は、その後追うようにIPAをつくることになり、以降IPAという新しいビールスタイルは国内でも広く消費者に受け入れられていきました。
ジョージ・ホジソン
18世紀のロンドンで活躍したビール醸造家。ホジソンはIPAの開拓に大きく関わった人物ですが、実はそれ以前に、世界で初めて当時主流だった黒ビールや茶色のビールよりも“淡い色”のビール=ペール・エールを生み出したとも言われています。クラフトビールの世界を開拓した重要な人物です。
当時の人にとってIPAの誕生は革命的な出来事だったんだね。
1900年代後半〜 アメリカでIPAが流行
1900年代後半になると、水のように軽いビールとは全く異なり、味に自由度も高かったIPAは、アメリカの醸造家たちにも注目され始めます。
イギリス発祥のIPAとの相違点は、ホップをアメリカ産に変えたことで加わった柑橘系の香りやフルーティーな香りでした。従来の「苦味が強くてアルコール度数が高い」というIPAのイメージから、「苦味も強いけど爽やかで華やかなアロマが効いている」という新しいバランスが生まれ、以降IPAというスタイルはアメリカの若者を中心に流行しました。
最近では、日本国内の醸造所でも様々なIPAがつくられるようになっています。本場イギリスやアメリカとはまた一味違った味わいが楽しめるでしょう。
アメリカの大胆な発想が世界のビールシーンを大きく変えたんだ!
IPAの特徴
IPAとは、高温&短時間の発酵方法(上面発酵)からつくられるエール系ビールで、ホップを大量に使用していることから、数あるビールスタイルの中ではかなり苦味の強いビールと言われています。
また、副原料にフルーツやハーブを使用したIPAもあり、苦味のなかにも爽やかな香りやすっきりとした後味が楽しめるスタイルです。
麦芽が生み出す甘みについては抑えめですが、苦味が強烈に突出する分、麦芽から醸し出されるコクで美味しさのバランスもとっています。
ちなみに、居酒屋でお馴染みの生ビールはラガー系ビールと言って、低温&長時間の下面発酵でできていますので、IPAはつくり方から味わい方まで全く違うクラフトビールらしいスタイルと言えるでしょう。
IPAが特徴的なビールだってことが一目瞭然だね。
IPAを象徴するキーワード
Hoppy(ホッピー): ホップが効いているという意味
IPAの味に“ホップを効かせる”ために醸造家たちが用いるのが、その名のまま「ホップ」という植物で、投入する量や品種、組み合わせ、旨味のバランスで調整しています。歴史にも登場したように、IPAには欠かせない原料の一つです。
確かにホップってよく聞くけど、どんな植物なの?
ホップとは
アサ科のつる性多年性植物で、和名は「セイヨウカラハナソウ(西洋唐花草)」。
ビールの原料として使われるのは、ホップが受粉する前の雌花が持つ毬花(かきゅう)という部分で、さらにその内部にある黄金色の粒子“ルプリン”が、ビールに苦みと香りや泡立ち、また殺菌効果ももたらしています。
アメリカを中心に、イギリス、ニュージーランド、オーストリア、ドイツ、また日本でもホップは栽培されています。
香りの表現例
IPAを飲んでよく言われるホップの香りの表現として、シトラス、木、青草などがあります。
○シトラスの香り
オレンジピール、グレープフルーツ、レモン、トロピカルフルーツなど
○木の香り
松の木、杉の木、干し草など
○青草の香り
刈りたての草、きゅうりなど
癒されそうな香りばかり。IPAって苦いだけのビールじゃないんだ。
数字でみるIPAとは
クラフトビールには、味や見た目を数値化してはかる基準があり、これらの数値がボトルや缶に表記されていることがあります。慣れてくると開栓前に「あ、これはABV4%だから飲みやすいかな」とか「IBUが10だから苦くないな」なんて想像することもできます。
ここで分かるIPAの特徴としては、アルコール度数と苦味の高さに比べて、色味が比較的淡いという組み合わせ。
もう一つの注目は、温度です。ビールというと、キンキンに冷やして「ゴクッゴクッ、ぷは~。」というCM的なイメージがありますが、この飲み方が一番適しているのはのどごし重視のラガー系ビールで、反対にIPAは風味や香りを楽しむビールとして造られています。
そのため、IPAは冷蔵庫から出して少し時間を置いてからゆっくりじっくり味わうことがビール通の間では基本とされています。
つまり、飲みごたえはやや強いものの、爽やかな香りと淡いきれいな色味が強さを緩和し、絶妙なバランスを生み出しているのです。
「ビール=ぬるいと不味い」は思い込みだったのか!
IPAの名称のバリエーション
IPAには、イングリッシュIPA、アメリカンIPA、ニューイングランドIPA、ベルジャンIPAといった地名がつく名称と、セッションIPA、ダブルIPA、トリプルIPAといって味や見た目の違いによって呼ばれる名称と様々あります。
ビールスタイルのバリエーションは世界中の醸造家たちが日々生み出しているものですので、ここではよく耳にする基本的な種類をご紹介します。
地名のつくIPA
アメリカンIPAとは
サンディエゴやアメリカの西海岸を中心に醸造される、ホップの苦味やアロマの香りを重視したビール。
その中でも西海岸のブルワリーが造るIPAはウェストコーストIPAとも呼ばれ、鮮烈な柑橘系の香りと苦みが特徴的。
ニューイングランドIPAとは
アメリカの北東部・ニューイングランド地方で造られる、フルーティーな香りと風味が強く、濁った見た目のIPA。
イングリッシュIPAとは
発祥国イギリスのIPA。英国産のホップを使用していて、アメリカンIPAよりホップが弱く、麦芽の香りが強い。
ベルジャンIPAとは
甘くフルーティーな風味を醸すベルギー産の酵母を使用したIPA。
見た目も味も異なるIPA
ダブルIPAとは
IPAよりアルコールやホップ、麦芽など全ておいてレベルアップしたIPA。特に麦芽の甘味が強めに感じられる。
シングルホップIPAとは
通常ホップをブレンドする所、一種類のホップしか使わないIPA。マイナーなスタイルで、特定のホップの味を試したいという通好みのIPA。
セッションIPAとは
IPAのホップの苦みや香りは保ちつつ、アルコール度数を4%未満と低くしたIPA。
「1セッション=1度の飲み会」の最初から最後まで飲んでも飽きないビールという意味らしい。
ブリュットIPAとは
ドライで苦味が少なく、ホッピーで高炭酸。
ホップの効いたシャンパンのような味わいとも表現されたりします。
フルーツIPAとは
フルーツを副原料に使用したIPA。
しっかりした苦味にフルーティーな甘みを掛け合わた現代風なスタイル。
苦みが苦手なビギナーさん向け。
ウッドエイジIPAとは
樽で熟成させてつくるIPA。
ブラックIPAとは
黒ビールのように焙煎した麦芽のマイルドなコクが感じられるIPA。
コーヒーIPAとは
香りづけにコーヒー豆を使用することで、IPAの苦味にコーヒー豆の香ばしさ、酸味、フルーティーさが感じられるIPA。
IPAをもっと美味しく飲む方法
グラスを選んでみる
IPAに合うと言われるグラスは、「パイントグラス」や「IPAグラス」と呼ばれる種類です。
パイントグラス
パイントグラスはイギリスで1パイント=20オンス(568ml)が入るグラスとして作られました。
飲み口が大きいのでIPAを含むエール系のしっかりとした香り高いビールにオススメです。
IPAグラス
下部の凸凹部分が特徴。
飲むたびに凸凹部分にビールが流れて泡を作り出す構造。
IPAの豊かな香りが逃げないように蓋の役割を泡がしてくれます。
クラフトビールは細かく分けると100種類以上もあり、それらの違いはとても繊細なためグラスの形状や厚みで全く味わいが変わると言われています。
もちろん自宅にあるグラスでも美味しいんだけど、機会があれば色んなグラスを試して“自分好み”のを見つけてみよう!
注ぎ方を変えてみる
IPAのように香りを楽しむスタイルのビールには最適なのが「三度注ぎ」と言う注ぎ方です。
三度注ぎとはビール大国のドイツやチェコ伝統の注ぎ方で、時間をかけてゆっくり注ぐための方法です。三度注ぎによって、炭酸をある程度抜きつつ、泡の壁をつくることで、より深みのある香りが閉じ込められ、味にコクを加えてくれると言われています。
- ビールを高い位置から、徐々に勢いをつけて注ぎます。グラスいっぱいに泡が作れたら2分ほど待ちます。
- 泡がグラスの半分くらいまで減ったら、グラスの縁に添わせながら泡の下に優しくビールを流し入れ、泡がグラスよりも1cmくらい盛り上がるまで注ぎます。
- 盛り上がった泡がグラスのふちより下がる前に、ゆっくり残りのビールを注ぎます。
衝撃!こんなに泡を立てたら「失敗だー」って思ってたよ
間違いなんてないのがクラフトビールなのさ!
食事とペアリングしてみる
IPAの美味しさをさらに引き出してくれる料理やおつまみの特徴として、
・さわやかな甘み
・ピリッとくるスパイス
・強めの香草
の3つが挙げられます。
また食事のチョイスは個人の好みに大きく左右されますので、ここでは私の気ままなオススメをご紹介させて頂きます!
さわやかな甘みのある料理
トマトやパプリカなどのさわやかで甘みのある野菜やフルーツを用いた料理は、IPA特有のガツンとした苦味に優しさを加えてくれる気がします。
IPAをもう少しマイルドに飲みたいなーと言う方におすすめです。
ピリッとくるスパイスを使った料理
ブラックペッパーやクミンのように刺激的なスパイスを用いた料理は、IPA特有のガツンとくる青草っぽいホップな風味と相まってよりあとを引くような味わいに変わります。特に辛党の方は、ぜひお試しください!
強めの香草を使った料理
パクチーやしそ等の風味が強いハーブを使った料理は、IPA特有の“クセ”をより際立たせてくれます。
もうすでにIPAにハマってしまっている方にオススメしたいです。スイートチリソースともよく合いそうですね。
IPAを単体で味わった後に「もっと可能性を引き出したい!」と思った方、あるいは「ビールだけで飲むのは苦手…」という方。
食事と合わせてIPAの新しい味わい方にチャレンジしてみてはいかがですか?
どれも好きな料理!これなら僕にも試せそうだ
よし、次のカレーの日のためにIPAゲットしとこっか!
(※ IPAくんはカレーが好物)
CRAFT BEER TIMES編集部が選ぶ!オススメIPAランキング5選
最後に私たちCRAFT BEER TIMES編集部が選んだオススメのIPAランキングをご紹介させていただきます。
このランキングは、クラフトビール初心者の方がIPAを知るために何を飲めば分かりやすいか、店舗やオンラインで手に入れやすい商品か、などの観点を加味して選びました。
もちろん人それぞれ好みは千差万別ですし、基本的にビールに優劣は付けられないものだと私たちは考えています。
ですので、あくまでもビールを選ぶための参考意見の一つとして見て頂ければ幸いです。
第5位 雷電カンヌキIPA(オラホビール)
長野県東御市のブルワリーであるオラホビールが販売するIPA。
柑橘香が強く感じられ、フルーティーな味わいを楽しめます。
苦味も強すぎず、価格もお手頃なため、IPAを初めて飲む方に特にオススメです。
第4位 インドの青鬼(ヤッホーブルーイング)
よなよなエールで知られるヤッホーブルーイングの定番商品のIPAです。
スーパーなどでも買える身近なIPAながら、その味わいは本物。
ホップ由来のガツンとした苦味とフルーティーな味わいを存分に感じられます。
第3位 フライングIPA (エチゴビール)
フライングIPAは、日本の地ビールにおけるパイオニア的存在である新潟県にあるエチゴビールがつくるIPAです。
突き抜ける苦味とさわやかなシトラスの香りがする、バランスの優れたアメリカンスタイルのIPAになっています。
第2位 PUNK IPA (BrewDog)
パンクIPAは、スコットランドのブルワリーであるBrewDogが、フラッグシップ商品として世界一のIPAを目指し、採算を度外視してつくりだした至高のIPAです。
定番商品ながら、大量のホップを贅沢に使い、手間を惜しまずホップのアロマを最大限に引き出しています。
第1位 ストーンIPA(Stone Brewing)
クラフトビールの本場であるアメリカで圧倒的な人気を誇るStone Brewingの看板商品です。
国産IPAと比べると少々お値段は張りますが、きっと飲んでみればそれだけの価値があると感じていただけると思います。それほどまでに強烈に印象に残るIPAです。
本場のアメリカンIPAを体験してみたいという方に是非オススメの商品です。
どれもパッケージがおしゃれでカッコいいね。
良い意味でビールっぽくない。
IPAは流行りのスタイルだから、これからもどんどん新しい銘柄が出てくると思うよ!
まとめ
今回はイギリス生まれのホッピーなIPAについてご紹介させていただきました。
発祥の由来やおいしさの味わい方など、自分なりに学んだIPAと言うビールスタイルについて、クラフトビールビギナーさん向けにお伝えしたくまとめてきましたが、終わりに改めて思うことは、ビールの飲み方、ビールから感じること、ビールを表現する言葉は、人それぞれということです。ちょっと矛盾ですよね(笑)
でも!そのくらい自由で、多彩で、創造的な場所が、クラフトビールの世界だと知っていただければ嬉しいです。
「とりあえずビール」ではなく、知って美味しい、選んで美味しい、素敵なクラフトビールライフを一緒に送りましょう!
それでは、また次回まで。
IPAくん、今日はありがとう!
ビールひとつにこんなに可能性があるなんて知らなかった!
僕の同期はここまで知って飲んでたのかなぁ…。
ビールの世界は奥深いからまだまだ知らない人も結構いるみたい。
でも、ビア助に知ってもらえて良かったよ!
今度は僕のこと注文できそう?
絶対注文するよ!
まずはフルーツIPA頼んで、次はダブルIPA、いやベルジャンIPAいってみるのもありか…
ははは〜!ビア助がIPAを気に入ってくれて嬉しいよ
分からないことがあればいつでも呼んで!
まだまだ仲間がたくさんいるから、またビア助に紹介するね!