常温保存はNG?ビールの適切な保存方法とは
投稿日:2020.12.06
こんにちは!
ラガービールの奥深さに興味を惹かれているCRAFT BEER TIMES編集部の熊倉です。
先日とあるビールを飲んだ時に、なにやらおかしな風味を感じました。
なんだか甘ったるいコーンの缶詰のような風味があって、あまり美味しいとは思えませんでした。
調べてみると、この風味はビールの保存状態によって現れた劣化臭だということが判明。
確かにその時飲んだビールは、真夏の時期に家の廊下で数週間放置していたものでした。
この経験を通じて「ビールは保存する状況によってこんなに味が変わってしまうんだ…」と実感しました。
というわけで、今回はビールの保存方法についてご紹介したいと思います。
最初に結論から言ってしまうと、
【冷蔵庫内で低温をキープし、なるべく動かさない】
がビールのベストな保存方法です。
なぜこの保存方法が良いのか、具体的な理由を解説していきます。
「ビールの保存方法なんて意識したことなかった!」という方にも、今回の記事を読んで、ビールを美味しく飲むための適切な保存方法を意識していただければ幸いです!
ビールは保存状態で味が変わる
ビールは適切な保存方法をしなければ風味が劣化してしまいます。
冒頭でも述べたように、私は劣化したビールを飲むことで保存状態の重要性を肌で感じました。
「いつも飲んでいる銘柄のビールだけれど、今日飲んだこれは何か違う…」とその時に思ったのです。
例え世界最高の品質と評価されたビールであっても、保存状態が悪ければその本来の美味しさを味わうことはできません。
だからこそ、ビールを美味しく飲むためにはしっかりとした保存管理が求められるのです。
保存状態が大事と言われているのはビール以外のお酒も同じですが、その中でもビールは特に保存環境に気を付けるべきお酒です。
その理由にはビールはそもそもフレッシュな状態で飲むものが多く、それらのビールは完成した瞬間から劣化が始まってしまうことが挙げられます。
また、無濾過タイプで酵母が瓶に入っているビールは、適切な温度管理をしないと酵母が活動を始めて味わいに変化を与えてしまいます。
クラフトビールの生産者たちの多くは、このビールの保存状態についてかなり厳重な管理を心がけています。
醸造所から店頭に並ぶまでの流通過程でビールは冷蔵管理が厳守され、できるかぎりフレッシュな状態のビール私たちのもとへとに提供するために努力しています。
自分のつくったビールを劣化した状態ではなく本来の美味しさのまま消費者に届けたいという想いは、生産者であれば誰しもが持っていることでしょう。
その生産者の思いを無駄にしないためにも、私たち飲み手もビール本来の美味しさを楽しむために品質管理に注意すべきと言えるでしょう。
クラフトビールは要冷蔵?
クラフトビールの銘柄の中には、ラベルや裏面に「要冷蔵」と記載されている銘柄があります。
それに対してキリン一番搾りやアサヒスーパードライなどの大手の国産ビールなどには、この要冷蔵の表記はありません。
この両者の違いにはなにがあるのでしょうか?
その答えはズバリ、「酵母」の有無です。
酵母とはビールの発酵のために使われる微生物で、クラフトビールにはこの酵母が入った銘柄が多くあります。酵母入りのビールはフレッシュでとろみのある口当たりがあり、独特の風味を感じることができます。
では、なぜ酵母入りのビールは冷蔵保存が必要なのでしょうか?
その理由は、ビールの温度が上がると酵母が活動を再開し、ビールの味わいを変化させてしまうからです。
酵母は種類にもよりますが、約10度以上の温度で活動を行いますので、出荷時の味わいを保つためにも5度以下の冷蔵保存が必要となるのです。
要冷蔵の表記があるビールは、品質を保つためにも必ず冷蔵庫で保管するようにしましょう。
要冷蔵の表記がないビールは、濾過によって酵母が取り除かれているか、加熱殺菌によって酵母が失活させられています。そのため、酵母による味わいや香りの変化は起きません。
ビールの劣化と熟成について
時間経過によってビールは劣化をすることもあれば、熟成されることもあります。劣化も熟成のどちらも、ビールの中で何らかの成分変化が起きている点については変わりありません
では、なにがこの2つの変化を分けているのでしょうか?
それはズバリ、その変化が美味しいか美味しくないかです。
ビールは劣化すると味わいや香りに好ましくない様々な変化が現れます。
ビールの劣化として挙げられる変化の例としては、湿った紙のような臭い、獣のような臭い、しつこさを感じる甘ったるい味わい、泡立ちの悪さなどが挙げられます。
反対にビールの熟成に見られる変化は、まろやかな舌触り、凝縮されたフルーツやナッツのような心地よい甘味、心地よく長引く余韻などポジティブなものです。
しかし、ホップのフレッシュな香りや爽快な苦味は熟成によって抜けていくという特徴もあります。
実際のところ世の中のほとんどのビールは早飲みタイプなので、原則としてビールは購入してからすぐ飲むように心がけましょう。熟成に耐えうるビールの種類は限られています。
早飲みタイプのビールと熟成タイプのビールの特徴を下にまとめましたので、ぜひ参考にしてみてください。
早飲みタイプのビールの特徴 | 熟成タイプのビールの特徴 |
---|---|
アルコール度数が5%前後 | アルコール度数が10%に近い |
ホップの香りが華やか | 苦味が強い、または酸味が強い |
ドライな味わい | 甘味のあるふくよかな味わい |
主なビアスタイル: ピルスナー、ペールエール、ヘイジーIPA、ヴァイツェン、ベルジャンホワイトなど | 主なビアスタイル: バーレイワイン、インペリアルスタウト、ランビック、ボック、ベルジャンダブルなど |
ビールの保存方法
ビールの保存方法の重要性を理解していただけたところで、ここではビールの具体的な保存方法についてご紹介していきたいと思います。
抑えるべき大事なポイントが3つありますので、以下でそれを確認していきましょう。
適度な低温状態をキープ
ビールは温度変化に弱く、特に高温下では風味が大きく劣化していきます。
30度を超える環境下でビールを保管すると、「カーボード臭」と呼ばれる湿ったダンボールのような臭いが発生します。
また、さらに高い温度にしばらく晒されたビールは「酸化臭」という甘ったるい風味が生じてしまいます。
では、ビールの保存はとにかく冷やせばいいのかと言うと、そういうわけでもありません。
ビールが凍ってしまうほどの低温では、味や香りの成分のバランスが崩れて元に戻らなくなる場合もあります。
結論としては、ビールの保管は5~10度程度の低温状態をキープすることがベストと言えます。
30度以上の環境下でビールは急速に劣化していくということも一緒に覚えておきましょう。
日光を避ける
ビールは日光を浴びると「日光臭」と呼ばれる香りが発生します。日光臭はスカンク臭とも呼ばれ、硫黄系の獣を思わせるような不快な香りと表現されます。
日光臭の発生はホップに含まれるイソフムロンという苦味成分が、太陽の直射日光によって分解されてしまうことが原因です。
この反応は短時間でも進んでしまうので、ビールを日光に晒すことは厳禁です。直射日光の当たらない冷暗所にビールは保管するようにしましょう。
冷蔵庫内の蛍光灯の光でも劣化は緩やかに進みますので、長期熟成させる予定のビールは新聞紙などで包むなど対策ができればベストです。
ちなみに、茶色や緑色の瓶は日光の波長をある程度遮断する効果があります。
とはいえその効果は完璧ではないのでやはり日光は避けるようにしましょう。
振動を避ける
ビールにとって振動は炭酸ガスや味わいのバランスを不安定にする要因となります。そのため、ビールは静置した状態を保つように心がけましょう。
購入したばかりのビールや通販で届いた直後のビールは、持ち運びや輸送などの過程で味わいにムラが出ています。
すぐに飲むよりも一日冷蔵庫などで置いてから飲んだほうが味わいに落ち着きが出まるのでおすすめ。
ビールを冷蔵庫に保管する場合は、ドアポケットや引き出しなどの動きがある場所は避けるようにすると良いでしょう。
まとめ
- 今回の記事のポイント
-
- ビールは保存状態によっては劣化してしまう
- ビールは基本的に早飲みのお酒だが、中には熟成向きのものもある
- 低温をキープ・日光を避ける・振動を与えないの3つが保存のポイント
ビールの保存方法はビールの美味しさを左右する重要なポイントです。
ビールを最高の状態で味わうためにも、適切な環境でビールを保存するようにしましょう。
それではまた!