クラフトビールとは?市販ビールとの違いや、主なビアスタイルを徹底解説!
更新日:2020.11.05 / 投稿日:2019.08.10
大学時代に酔っ払って「イパ下さい!」とIPAを注文して以来、クラフトビールにどっぷりハマってしまった、CRAFT BEER TIMES編集部の熊倉です。
ビール好きが高じて地元新潟の酒屋に勤めている、酒屋兼ビールライターです。
「とりあえずビール!」という言葉があるように、ビールは日本人にとってとても馴染みのあるお酒です。
日本以外の国々でもビールは乾杯酒として飲まれており、世界で最も消費されているお酒でもあります。
そして現在クラフトビールが世界各地でブームとなっています。
日本でもコンビニやスーパーでいろんなビールを見かけるようになりましたね。
今回の記事ではそんなクラフトビールについて、その概要や種類、作り方、歴史、オススメのビールなどなど基礎知識をこれでもかというくらい徹底的にまとめました。
クラフトビール初心者さんがクラフトビールの世界に踏み入れる第一歩目として、参考にして頂けるような内容になっていますので、長文ですが是非ご一読いただけると嬉しいです。
それでは参りましょう!
クラフトビールの定義とは?
さて、そもそも「クラフトビール」とは、どんなビールのことを指す言葉なのかご存知でしょうか?
クラフトビールではなく「地ビール」という言葉で呼ばれることがあったり、国内大手のビールメーカーが市販で販売しているビールでも「クラフト〜」と名前が付いているものがあったりで、正直何が違うの?と思われている方もいるかと思います。
まずは改めてその意味と、地ビールや大手国産ビールとの違いを確認していきましょう。
地ビールとクラフトビールって何が違う?
クラフトビールという言葉が世の中に広まる以前は「地ビール」という言葉が広く知られていました。
実はこの「クラフトビール」や「地ビール」という言葉は、業界のルールや法律などで定められた明確な定義がない曖昧な言葉なのです。
あえて区分するとしたら、下記のように分けて考えられることが一般的に多いと思います。
- 地ビール
-
大手メーカーで大量に生産されるビールに対し、地域密着型の小規模な醸造所で生産されるビール
- クラフトビール
-
ビール職人がこだわりを持ち、丹精込めて造ったビール
よく混合されて使われる言葉ですが、意味合いが微妙に異なっています。
「地ビール」の定義でポイントとなるのは「規模」です。
どのようなビール造りをしているかではなく、大手ビールメーカーよりも小さな醸造所であれば地ビールと名乗ることができます。
一方「クラフトビール」の定義は製造方法やビール造りに対する姿勢が求められています。
たとえ大きな醸造所や大手ビールメーカーであっても、その商品にこだわりがあるのならクラフトビールと呼ぶことができるのです。
なるほど。
醸造所の規模に限らず、職人がこだわりを持って造ったビールが“クラフトビール”と呼ばれるんだね。
市販のビールとクラフトビールって何が違う?
クラフトビールと市販のビールの大きな違いは流通管理と価格です。
ビールは高温にさらされると、その香り成分が失われてオフフレーバーと呼ばれる酸化した香りが発生したり、泡の持ちが悪くなったりします。
ですので、冷蔵保存がビールにとってベストな状態なのです。
みなさんが普段スーパーやコンビニで手に取る大手メーカーの国産ビールは、基本的に常温で流通しています。
これらのビールは製造の段階で濾過又は熱処理によって酵母が取り除かれています。
そのため、ある程度の温度変化ではそう簡単に劣化はしないのです。
もちろん市販されている国産大手のビールも十分な美味しさを持っていますが、やはりビールは鮮度が命です。
もし国産大手ビールも冷蔵で流通したのなら、もっと美味しい状態で皆様のもとに届くことでしょう。(価格は今よりも高くなること確実ですが…)
それに対して、クラフトビールは酵母が生きた状態で出荷されるタイプが多く、そういったビールを常温で保存すると酵母が活動を再開して味を変えてしまいます。
そういったビールは冷蔵での流通が必須となるのです。
酵母が入ってないビールでも、品質維持のために冷蔵配送を徹底しているブルワリーやクラフトビール業者は多いです。
また、厳選された原料を使い、手間をかけて作られるクラフトビールは、製造過程でももちろん費用がかかります。
ビール造りのスケールも市販の国産大手ビールとは異なります。
大手ビールメーカーはその資本力を活用した大量仕入れ、大量生産により製造コストを削減しています。
クラフトビールは製造コストや流通コストの面でどうしても市販の大手国産ビールよりも高い価格にはなりますが、それは良い商品を良い状態で管理しているためなのです。
クラフトビールには市販のビールにはない“手間”や“品質の高さ”があるのか。
値段が高い理由にも納得いくね!
ビールはどのように作られている?
次に、そもそもビールというお酒はどのようにして作られているものなのか、その基礎的な知識を学んでいきましょう。
ビールの原料や製造方法を知っていると、クラフトビールの多様な違いをより楽しむことができるようになりますよ。
ビールの原料
ビールとは麦・ホップ・酵母・水を主な原料とした醸造酒です。
醸造酒とは、果実や穀物原料の糖分を酵母が食べることによってアルコールと炭酸ガスを発生させてできるお酒のことです。(ビールのほかにはワインや日本酒も醸造酒の仲間です)
下記のビールの原料についてそれぞれ解説していきます。
- 麦芽(モルト)
- ホップ
- 酵母
- 水
- 副原料
1. 麦芽(モルト)
麦芽はビールのメインとなる原料です。
味や香り、泡持ちに影響を与えます。これがなければビールはビールと呼べません。
麦芽とは、麦を発芽させたものです。モルトとも呼ばれます。
発芽することによって、麦の中にあるデンプンを分解するための酵素が生まれます。この酵素が後のビール造りの工程で麦の汁を甘くしてくれます。
発芽した麦芽は、そのまま放っておくと麦芽が成長するために自らのデンプンを糖分に変えて消費してしまいます。
そのため「焙燥」という麦芽を乾燥させる作業が行われます。
これによって麦芽の成長を止め、適度に酵素を持った状態に仕上げるのです。
この「焙燥」の温度によって麦芽に付く色や成分が変わります。温度が低ければ麦芽は淡い色となり、強い酵素力を維持します。
温度が高ければ麦芽は黒くなって酵素力は弱まります。また、高温で焙燥されることで香ばしい風味や焦げたような苦味が麦芽にもたらされます。
どの麦芽をどの分量使うかによって、ビールの色や香り、糖分の量が変わるのです。
黒ビールが黒い理由って、麦芽の焙煎度合いによることなんだね!
2. ホップ
ビールの魅力的な香りと苦味はこのホップによるものです。
毬花とも呼ばれ、緑色の小さな松ぼっくりのような形をしたツル性の植物です。
ホップの中にある「ルプリン」という黄色いつぶつぶがの器官が、ビールに苦味や香りを与えます。
また、ホップには防腐効果や泡立ちを良くする効果もあります。
ホップは通常は収穫して乾燥したのちに、そのままの姿か、粉末にしてからペレット状(円筒状)に加工されたものがビール造りに使われます。
ホップは空気接触による劣化ダメージが大きく、生の状態での流通が難しいため加工されて使われることがほとんどです。
(フレッシュなホップを使ったビールはとてもレアなので見かけたらぜひ飲んでみてください!)
ビールに使われるホップの品種は100種類以上あり、それぞれ香りや苦味の強さに個性があります。ワインのブドウ品種のように、ホップの品種による違いがクラフトビールでは楽しまれています。
品種改良も盛んに行われており、アメリカやヨーロッパ、オーストラリア、日本などを中心に新しいホップの開発が進んでいます。
品種が100以上もあるのは驚きだね!
自分に合ったホップの香りが見つかったらもっと美味しくビールが飲めるかもしれないなぁ
3. 酵母
ビールをお酒に変身させるのは酵母の力です。
麦芽の持つ糖分を酵母がアルコールと二酸化炭素に分解し、その過程で様々な香り成分やその他の味わいを生み出します。
世界に存在するアルコール発酵をする酵母は1000を軽く超える種類が確認されています。
その中でビールの発酵に適したごく一部がビール酵母と呼ばれるのです。
ビールの酵母は大きく分けてラガー酵母とエール酵母の2種類に分類されます。
ラガー酵母(下面発酵酵母)はすっきりと飲みやすいタイプのビールを造ります。約4~10度の低温下で活動し、酵母は発酵タンクの下の方で発酵します。
一方、エール酵母(上面発酵酵母)は香りが豊かで味わい深いビールを造ります。約13~24度の中高温下で活動し、酵母は発酵タンクの上の方で発酵します。
このほかにも酵母には種類がたくさんあります。
南ドイツの白ビールに使われるバナナやクローブの香りを生むヴァイツェン酵母や、ベルギーのランビックに使われる自然界や醸造所に住みついている野生酵母など、個性豊かな酵母が存在します。
また、近年ではワインや日本酒の酵母がビールにも使われるなど、カテゴリーを越えた面白いビールが生まれています。
よく耳にする「ラガー」や「エール」は酵母の種類だったんだね。
たまにパンのような香りがするビールがあったりするけど、酵母由来の香りだったんだね。面白い!
4. 水
ビールのほとんどは水でできています。
そのため仕込み水の成分はビールの個性に大きな影響を与えます。
大事な要素は水に含まれるカルシウムやマグネシウムなどのミネラルの量です。ミネラルな豊富な水を硬水、少ない水を軟水といいます。
硬水で仕込まれたビールは、発酵が盛んに進み、ビールの味わいや色味が濃くなります。
一方、軟水仕込みのビールは、シャープで軽やかな味わいになります。
イギリスやアイルランドではペールエールやポーターなど濃色でコクのあるビールが生まれ、チェコ・ピルゼン地区では淡色で爽やかなピルスナービールが生まれました。
前者は硬水、後者は軟水の土地であったことから、出来上がるビールの違いが生まれたのです。
水質調節の技術が向上している近年では、ブルワーによって仕込み水の成分はビールに適したものに調節されます。
そのため、世界各地でさまざまなビールを造ることが可能になりました。
水の性質がビールの種類を分けたのかぁ。
日本は軟水の国だからピルスナーが人気なのかな。
5. 副原料
これまで説明してきた原料以外で、ビールの味わいや香りを特徴づけるために使われる原料です。
世界には様々な原料を使ったビールがたくさんあります。フルーツやチョコレート、ハーブなどをはじめとし、スパイス、茶葉、米、はちみつなどがあり、副原料を使った多様性に富んだビールが日夜生まれています。
※日本の酒税法では「ビール」に使用可能な副原料が定められています。この規定に該当しない副原料を使用した場合「発泡酒」の扱いとなります。
参考資料:https://www.nta.go.jp/publication/pamph/pdf/0018004-031_01.pdf
僕みたいにビール本来の苦味や香りが苦手な人としては、フルーツやハーブの特徴があると飲みやすくなって良いんだよね!
ビールの製造方法
ビール造りは複雑な工程をいくつもこなさなければなりません。
その工程をわずかに変えるだけでも仕上がりには大きな変化が生まれます。
どのようにしてビールが作られているのかを見ていきましょう。
1. 麦芽粉砕
麦芽の持つデンプンを効率よく分解するために、麦芽をローラー式の粉砕機で細かくします。
2. 糖化
粉砕した麦芽と仕込み水を大きな鍋に入れて煮込んでいきます。
適切な温度(50~70度)で煮込むことで麦芽の持つ酵素が活性化し、麦芽のデンプンを糖分に、たんぱく質はアミノ酸へと分解していきます。
糖化が終わったら不純物を取り除いて麦汁(ばくじゅう)を造ります。完成した麦汁の味はとっても甘いです。
3. 煮沸
きれいになった麦汁にホップを加えて煮沸していきます。
ホップは加熱することによって苦味を麦汁にもたらし、熱が加わらなければ香りを麦汁に与えます。
ホップには苦味付け用のものと、香り付け用のものがあるので、どのホップを、どのくらいの時間、どのタイミングで投入するかはブリュワーの腕の見せ所です。
4. 冷却
煮沸の終わった麦汁は冷却器を通って、不純物を取り除きながら発酵に適した温度まで下げられます。
5. 発酵
酵母が麦汁に投入されると、いよいよ発酵が始まります。
酵母は麦汁内の糖分を消費してアルコールと炭酸ガスを発生させます。
そのほかにも酵母は麦汁の中にある様々な栄養分を使って、香りや旨味成分などを生み出します。
下面発酵酵母は10度前後で活動し、約7~10間ほど発酵を続けます。
上面発酵酵母は20度前後で活動し、3~5日ほどで発酵を終えます。
6. 熟成
発酵を終えたばかりのビールは荒々しい味わいのため、別のタンクに移し熟成させて味を落ち着かせます。
一般的に下面発酵ビールは約1か月、上面発酵ビールは1~2週間程寝かせます。
7. ろ過・熱処理
熟成を終えたビールは、酵母の活動を止めるためにろ過又は熱処理を加えます。ろ過をすることによってビールはクリアな色になります。
8. 容器詰め
完成したビールを瓶や缶、樽に充填します。どの容器においても品質劣化の原因となる酸素の混入を徹底的に防いで容器に詰められます。
ビールができるまでにこんなに複雑な工程があるとは知らなかった!
微妙な温度やタイミングの違いが無数のレシピを生み出しているんだね。
ビアスタイルとは?知っておきたい主要な12種類
世界には数えきれないほどの様々なビールの種類がありますが、それを原料や製法、アルコール度数などで分類したものを「ビアスタイル」と呼びます。
現在ビアスタイルの数は、なんと140種を超えるとされています。
ビアスタイルを知ることで、自分の飲みたいビールを探すことができますし、飲んでいるビールの製造方法や生まれた地にまで想いを馳せることができるようにもなります。
ここでは、その中でもクラフトビールの世界でよく見かける、特におさえておきたい主要なビアスタイルを12種類ご紹介いたします!
ピルスナー
ラガービールを代表する世界で最も消費されているビアスタイルです。
澄んだ黄金色の液体とすっきりとしたのど越しの良さから世界中から人気を集めています。
チェコのピルゼン地区でドイツ人醸造家によって造られたスタイルです。
日本の大手ビールメーカーの主要銘柄もほとんどがこのピルスナースタイルです。
なぜ日本でピルスナーが主流かという理由には、「ドイツからビール技術を学んだ」「高温多湿の日本の気候にピルスナーが受け入れられた」など諸説あります。
ペールエール
イギリス発祥の上面発酵ビールを代表するスタイル。
モルトのコクとホップの苦味、香りのバランスが良い飲み飽きしないビールです。
イギリスのパブなどの定番のスタイルですが、アメリカに渡ったことで世界的に人気が広がりました。
伝統的なイギリス産のペールエールは、モルトの甘味やコクが強く、ホップの香りはハーブや紅茶のような香りが特徴です。
アメリカ産のペールエールはモルトの主張が控えめで、ホップの華やかな香りと苦味が強く出ています。
IPA(インディアペールエール)
世のクラフトビール人気の火付け役とも言えるスタイルです。
強烈な苦味と鮮烈なホップの華やかさが最大の特徴で、これまでIPAは数多くのクラフトビールファンを生み出してきました。
イギリス本土からアメリカ大陸にペールエールを船で運ぶ際に、防腐対策として大量のホップを添加したことから生まれたスタイルです。
今や世界中で大人気のIPAですが、様々な進化系のIPAがアメリカを中心に各地でチャレンジされており、今後も目が離せないビアスタイルです。
ヴァイツェン
南ドイツの伝統的な小麦を使った白ビールです。
バナナのような香りと、クローブやナツメグなどのスパイスの香りを併せ持つ女性人気の高いスタイルです。
小麦麦芽の使用率が50%以上と定められており、きめの細かい豊かな泡も特徴の一つです。
ベルジャンホワイト
ベルギーで古くから親しまれている白ビールです。
小麦麦芽と、麦芽化していない麦が一部使われているのが特徴で、さらっとした口当たりと長持ちする泡を造ります。
オレンジピールやコリアンダーなどの副原料が使われることが多く、爽やかでピリリとした味わいを楽しむことができます。
セゾン
ベルギーの伝統的なエールビールです。
ベルギーの農家が農作業の合間に水代わりに飲むものとして造られるビールで、アルコール度数が低めのさっぱりとしたフルーティーな味わいが特徴です。
別名をファームハウスエールと呼び、その農家ごとにビールのレシピが違うため、いろいろな味わいのセゾンが存在します。
近年はこの点をリスペクトし、個性豊かなセゾンビールが世界各地で造られています。
ポーター / スタウト
イギリス・ロンドン発祥の上面発酵タイプの黒ビールです。
焙煎したモルトを使用するため色は濃く、コーヒーやチョコレートのような香ばしさを感じることができます。
最初に誕生したスタイルがポーターで、ロンドンの市場で働く運び屋たちに好まれたことからポーターと呼ばれるようになりました。
その後アイルランドで黒く焦げるほど焙煎した大麦を加えてより香ばしさと苦味を増したポーターが誕生しました。それが英語で「強い」を意味するスタウトと名づけられました。
デュンケル / シュヴァルツ
濃色のラガータイプのドイツビールです。
焙煎された麦芽の香ばしさとほのかな甘みが特徴です。
濃い色をしていますが下面発酵ビールのため味わいはすっきりとしています。
名前の由来はドイツ語からきており、デュンケルは「濃い・暗い」、シュバルツは「黒い」を意味しています。
ボック
ドイツのアインベック地方発祥の伝統的な高アルコールビールです。
モルトのコクがあり個性的でしっかりとした口当たりながらも飲みやすいのが特徴です。
ボックはドイツ語で雄ヤギを意味し、ボックを飲むと雄ヤギのように元気が湧いてくることからその名が付いたそうです。
ラオホ
ブナの木で1日以上かけて燻製した麦芽を使用した個性的なスタイル。
濃色ですっきりとした味わいですが、燻された麦芽からくる燻製の香りが非常にユニーク。
ドイツのバイエルン地方にあるバンベルグという都市で造られているビールです。
バーレイワイン
通常の数倍の量の麦芽とホップが使用されるイギリスで生まれた高アルコールビールです。
ドライフルーツやカラメルなどの非常に複雑な香りと厚みのある味わいを楽しめます。
当時のイギリスは他のヨーロッパ諸国と比べて寒冷な気候だったため、ワインを造るためのブドウが育てられませんでした。そこで麦を原料にワインを造った結果、バーレイワインが誕生したのです。
アルコール度数は10%以上のものが多く、熟成によってその味わいは洗練されていきます。短くて半年~1年、平均で5年、長いものだと10年以上の熟成期間を経て出荷されます。
ランビック
ベルギーのブリュッセル地方で造られる野生酵母を使ったスタイルのビールです。
麦汁に自然界に存在する野生酵母を取り込んだのちに、木樽の中で1~3年の長い時間をかけて発酵・熟成されます。
強い酸味とヨーグルトやチーズを思わせる非常に複雑な香りが特徴です。
複数の樽をブレンドして出荷されるのが一般的です。
発酵・熟成中にフルーツが加えられるフルーツランビックというスタイルもあります。
クラフトビールの歴史
クラフトビールという言葉や概念はいつ生まれたかご存知でしょうか?
実は現在世界中で流行しているクラフトビールは、アメリカのムーブメントから始まったものなのです。
ですので、まずはアメリカのクラフトビールの広がっていく経緯を見ていきましょう。
アメリカのクラフトビール文化の歴史
産業革命が起きた1800年代初期は、まだイギリスから持ち込まれた上面発酵酵母を使用したペールエールなどが造られていました。
それからしばらく時が経ち1830年ごろからドイツ系移民の増加化から下面発酵タイプのラガービールが造られるようになりました。
1842年にはチェコでピルスナーが誕生し、その爽やかな味わいと黄金色に輝く液体は世界の多くの人々を魅了しました。
また、1800年代後半には冷蔵技術の発達により通年でのビール造りが可能となりました。
これにより腐敗の原因が少なく安定した生産が見込める低温発酵タイプのラガービールが世界中で造られるようになり、アメリカでもラガータイプのビール造りが主流となっていきました。
20世紀に入ると、粗悪なアルコール飲料が市場にはびこりアルコール依存症が社会問題が起こりました。
そういった背景から1920年にアルコール飲料の製造、販売を規制する禁酒法が成立しました。
酒の製造が禁止されることによって当時の醸造所の多くは苦境に立たされ、小規模の醸造所を中心にそのほとんどが廃業していきました。
しかし、禁酒法は密造酒や密輸、地下酒場などの多くの不法行為を生み出したために13年後の1933年に廃止となりました。
それからは「バドワイザー」や「クアーズ」をはじめとする大手のビールメーカーが市場を独占することになりました。
禁酒法が施行された13年の間に小規模の醸造所はビールを造るための環境を失っていたのです。
生き残った醸造所も資本力のある大手のビールメーカーに吸収合併されていきました。
その結果、大量生産が可能なガス圧が強くのど越し爽やかなアメリカン・ライトラガーが市場を席巻するようになったのです。
第二次世界大戦後が終わり、1960年代からアメリカのクラフトビールのムーブメントが起こり始めます。
大手ビールメーカーの画一的な味わいのビールに嫌気がさした一部のビール愛好家が、この時期からマイクロブルワリーと呼ばれる小規模醸造所を立ち上げるようになりました。
1970年代には「カスケード」という非常に強い柑橘系の香りを出すホップが品種開発され、その鮮烈な苦味と香りは当時のビール愛好家たちに大きな衝撃を立てました。
このホップの登場により、コクがあって苦味の効いた華やかな香りのアメリカンスタイルのビールが確立されました。
もともとアメリカには自家醸造の文化が根付いていたことから、1900年代後半からマイクロブルワリーが爆発的に増加していきました。
2000年代に入ってからもアメリカのクラフトビール人気はどんどん進み、ヨーロッパ伝統のスタイルのビールや、革新的な製法のビールが次々に生まれました。
現在ではアメリカには6000を超えるマイクロブルワリーがあり、ビール市場全体におけるクラフトビールの割合は20%超えています。
確か日本のビール市場におけるクラフトビールの割合は1%だったから、20%のアメリカはクラフトビール大国なんだなぁ。
日本のクラフトビール文化の歴史
日本ではクラフトビールの流行の前に地ビールの解禁がありました。
1994年に酒税法の改正があり、ビールの年間の最低醸造量が2000キロリットルから、60キロリットルへ大幅に緩和されました。
これによってビール造りは大手企業だけが可能なものではなくなり、全国各地で小規模の醸造所が生まれました。
それが「地ビール」と呼ばれるようになったのです。
地ビールは大きなブームとなりましたが、当時のマイクロブルワリーはまだ高度な醸造技術を持っておらず、大手ビールメーカー商品よりも高価でありながら劣った品質のものが多かったといいます。
また、発泡酒の台頭も後押もあり、次第に地ビール人気は薄れていき、多くの醸造所は姿を消していきました。
そして2000年代に入ってからアメリカでクラフトビールブームが始まり、その波は世界へと広がっていきました。
多様化が求められる時代、クラフトビールは日本を含め世界各地で人気を集めていきます。
地ビールブームが廃れていく中で、それでも醸造技術を磨き続けたブルワリーは、このクラフトビールブームで再びチャンスを掴むことになりました。
地ビール時代から国内ビールを支えたブルワリーが中心となって、日本でのクラフトビールの認知は少しずつ高まっていきました。
2010年に入ると、日本のクラフトビール人気は加速していきます。
マイクロブルワリーの数は増え続け、その数は現在300を超えています。
日本ならではの原料や作りを活かした多様なビールが全国各地で造られるようになり、日本のビールが国際コンペで受賞することも多くなりました。
それにより海外からの注目も高まり、さらにクラフトビール業界は盛り上がりを見せました。
また近年では、大手ビールメーカーが手掛けるクラフトビールの発売が始まっており、今後ますます国内のクラフトビールの普及は進んでいくと思われます。
日本では今がまさにクラフトビールブームの始まりって感じだね!
これからが楽しみだ!
初心者さんにもオススメな最初に飲むべきクラフトビール10選
ここまでの解説を読んでいただけたならば、既にあなたもクラフトビールについて詳しくなっているはず!
ですが結局のところ、百聞は一見にしかずです!
やはりクラフトビールのことを知るにはクラフトビールを実際に飲んでみることが一番です。
でもクラフトビールを飲んだことがない初心者さんとしては、クラフトビールって種類が多すぎて何から飲んでいいか分からないと思われているかもしれません。
ということで、今回はクラフトビールの世界に入門するのにオススメな最初に飲むべきビールをCRAFT BEER TIMES編集部が選んでみました。
様々な国のビールやビアスタイルをカバーするラインナップになっておりますので、是非参考にしてみてください!
1. ヤッホーブルーイング よなよなエール
国産ペールエールの決定版です。
日本のクラフトビールメーカー最大手であるヤッホーブルーイングの看板商品です。
現代におけるクラフトビールの基本であるアメリカンペールエールスタイルのビールで、ホップの豊かな香りと苦味、心地よい厚みのあるボディが特徴です。
1997年に生まれた商品でその歴史は長く、早い時期から日本のクラフトビールシーンを引っ張ってきたビールです。
このよなよなエールからクラフトビールにはまった人も多いようです。
コンビニやスーパーでも販売しており、今もっとも手に入れやすい日本のクラフトビールひとつですので、まずはコチラから試してみてはいかがでしょうか?
2. シエラネバダ ペールエール
アメリカにクラフトビール革命を起こした全ての始まりと言われる1本です。
グレープフルーツやレモンなどの柑橘類や松ヤニなどの樹脂の香りが特徴の「カスケードホップ」を初めて使ったビールです。
これまでのハーブ様の香り主体のヨーロッパ系ホップとは異なる、華やかで爽快な香りは当時のアメリカのクラフトビールシーンに強烈なインパクトを与えました。
1980年に誕生して以来数えきれないほどのブルワーたちに影響を及ぼしたとされています。
今でも全米で売り上げトップを誇る、元祖アメリカンペールエールです。
3. エチゴビール フライングIPA
全国第一号地ビールメーカーのエチゴビールが醸造するIPAスタイルのビールです。
スカッと突き抜ける華やかなシトラスの香り、ガツンとくる強烈な苦味が感じられるお手本のようなIPAです。
2016年に限定醸造商品として発売されたのですが、あまりにも好評だったため翌年2017年には定番商品として発売されました。
確かな苦味がありながら、爽やかな香りがそれをうまくまとめ上げる完成度の高いビールです。
リピート率の高さにも定評がある商品ですので、飲みすぎ注意です!!
4. ブリュードッグ パンクIPA
世界中に衝撃を与えた超人気のIPAです。
スコットランドの大人気ブルワーであるブリュードックの看板商品で、その圧倒的なホップの香りと苦味、モルトの厚みから世界中に熱狂的なファンがいるほどのビールです。
柑橘系と熱帯系の果物の鮮烈な香りは、試行錯誤を重ねた6種類ものホップのブレンドから生まれています。
ホップの香りの多様性とその面白さをこの1本から実感できますので、ぜひ圧倒的なホップの衝撃を味わってみてください。
また、ブリュードック直営のビアバーが六本木にあるので、そこでサーバーから注いだ樽生で飲むことも強くおススメします!
5. ピルスナーウルケル
チェコのピルゼン地区で生まれた黄金色のピルスナービールの元祖です。
苦味・香り・甘味が調和した非常にキレイな仕上がりとなっています。濃厚でクリーミーな泡も特徴に一つです。
起源にしてオンリーワンの歴史のあるピルスナーです。あなたの普段飲んでいるピルスナービールと比較してみてはいかがでしょうか?
また、ピルスナーウルケルには「ハランディカ」という伝統的な注ぎ方があります。その注ぎ方は樽生でしか味わえませんので、ぜひお店でも飲んでみてください。注ぎ方も要注目ですよ!
6. 富士桜高原麦酒 ヴァイツェン
山梨県の富士桜高原麦酒が醸造する、ドイツ伝統のヴァイツェンスタイルのビールです。
バナナの香りがよく出ており、きめ細やかで豊かな泡立ちと滑らかな口当たりは、まさにヴァイツェンのお手本ともいえる仕上がりになっています。
ちなみにこのビールはヴァイツェンの中でも「ヘーフェヴァイツェン」という酵母が残ったままの濁りのあるスタイルです。酵母が残ることによってより滑らかな飲み口とまったりとした味わいが楽しめます。
7. 常陸野ネストビール ホワイトエール
茨城県の常陸野ネストビールが醸造するベルジャンホワイトスタイルのビールです。
オレンジピール、コリアンダー、クミンを加えた薄濁りの白ビールで、スパイシーでさっぱりとした爽味わいがあります。苦味は控えめで爽やかな酸味と香りがあるので、ビールが苦手な方にもオススメできます。
常陸野ネストビールは海外でも人気を集めている日本を代表するクラフトビールブランドです。
可愛らしいフクロウのマークが目印ですので、見つけたらぜひ飲んでみてください。
8. COEDO 漆黒
埼玉県のCOEDOが醸造するシュバルツスタイルの黒ビールです。
ローストされた麦芽を使った濃色ビールで、コーヒーのような香ばしい香りが特徴的です。その真っ黒な見た目に反し、味わいはすっきりしたキレの良さを持っています。
ラガータイプの黒ビールなので、どちらかというとゴクゴク飲めるタイプです。
「黒ビールはゆっくり飲むもの」という考えを持っている人にぜひ一度飲んでいただきたい1本です。
9. 箕面ビール スタウト
大阪府の箕面ビールが製造するスタウトビールです。
箕面ビールは関西を代表するブルワリーで、全国各地のビールイベントに参加したり、ほかのブルワリーとのコラボを積極的に行うなどさまざまな活動を行なっています。
コーヒーやビターチョコレートを思わせる芳醇な香りと、深みのある滑らかな味わいが楽しめます。
スタウトの中でもドライな味わいに分類されますが、チョコレートの香りやとろっとした飲み口からほのかな甘味も感じられます。
国際的な品評会で1位を取ったスタウトですので、その品質に間違いはないです!
10. カンティヨン・グーズ
ベルギー伝統のランビックビールです。
カンティヨン グーズは複数の年代のランビックをブレンドて瓶詰めしたのち、数ヶ月かけて瓶内二次発酵されたビールです。
非常に強い独特な酸味と、ワインのような果実の香りやヨーグルトのような酸味のある香りが特徴です。
初めてランビックを飲む方は驚かれると思いますが、この複雑な香りと酸味がランビックの魅力なのです。
ハマる人はどんどんその奥深さに取り込まれていきます。
百聞は一見にしかず、ぜひ一度チャレンジしてみてください!
国内で開催されているオススメのクラフトビールイベント
毎年全国各地でクラフトビールのイベントが開催されています。
クラフトビールの世界にハマったら、イベントに参加して色々なビールを飲んでみるのも楽しくてオススメですよ。
1. けやき広場ビール祭り
日本最大級のクラフトビールのイベントです。
2009年から埼玉県のけやき広場又はさいたまスーパーアリーナで催されるイベントで、毎年春と秋の2回開催となっています。
入場料は無料で、ビールやフードを注文した分だけ支払いをするキャッシュオン制度となっています。
年を追うごとに出店数が増え続け、多い年には100を超える出店数となるそうです。来場客数も右肩上がりで、人が増えすぎたため現在では有料席が設けられるほどの大盛況ぶりです。
このイベントでしか味わえないコラボビールや、地元埼玉県を中心とした様々な飲食店のお料理とビールのペアリングを楽しむことができます。
最新の情報は公式サイトやSNSでチェックしてみて下さい。
【公式サイト】https://www.beerkeyaki.jp
【facebook】https://www.facebook.com/beerkeyaki/
2. ベルギービールウィークエンド
全国の数カ所で開催されるベルギービールに特化したイベントです。
東京や大阪、名古屋などの都市部で開催され、2019年に開催10周年を迎えます。各会場合計で150種類を超える多種多様なベルギービールと、ベルギーご当地のグルメやベルギーの人気アーティストによるライブパフォーマンスなどが楽しめます。
入場料は無料ですが、支払いは専用コインが使われますので、専用コインとグラスを購入する必要があります。
当日でも購入可能ですが、前売りチケットの方がお得です。
また、BBWalkerという公式アプリがリリースされており、当日の商品ラインナップなど様々な情報が確認できるそうです。
参加される方は公式サイトやSNSを要チェックです!
【公式サイト】https://belgianbeerweekend.jp
【facebook】https://www.facebook.com/bbwjapan
【Instagram】https://www.instagram.com/bbwjapan
【Twitter】https://www.twitter.com/bbwjapan
3. オクトーバーフェスト
日本国内で行われるドイツビールの祭典です。
オクトーバーフェストとは、ドイツ・バイエルン州で10月に開催されるお祭りです。
現在世界で最も規模のビールのイベントで、およそ600万リットルものビールが消費されるそうです。まさに世界一!
そんなオクトーバーフェストですが、2003年から日本でも開催されるようになりました。
現在では春から夏にかけて全国数カ所の会場でイベントが開催されており、豪快な大ジョッキで提供されるドイツビールと本場ドイツのお料理を味わうことができます。
ドイツ楽団の演奏や乾杯の歌など、ドイツ文化とのふれあいも人気のひとつです。
こちらのイベントも入場料は無料です。
ビールやフードを購入をする都度お金を支払いますが、最初の一杯目のビール購入時にグラス預かり金として1,000円がかかります。
ビールを飲み終わった後グラスを返却するとグラス代は返ってきます。
ビール大国ドイツならではのお祭りの雰囲気が楽しめるイベントです。
ぜひ一度参加してみてはいかがでしょうか。
【公式サイト】https://www.oktober-fest.jp
【facebook】https://www.facebook.com/oktoberfest1810
【Instagram】https://www.instagram.com/oktoberfest1810
【Twitter】https://twitter.com/oktoberfest1810
4. ビアフェス
日本で最も歴史のあるビールイベントです。
1994年から開催されているためその歴史は古く、世界5大ビール審査会である「インターナショナル・ビアカップ」「ジャパン・グレートビア・カップ」で金、銀、銅賞を受賞したビールが勢ぞろいします。
その他にも国内外からビ様々なビールが集まり、その数は200種類を越えます。東京や大阪、横浜などの全国の複数の都市で毎年開催されています。
入場料を支払えばビールが全て飲み放題です。
専用のテイスティンググラスが使われ、一杯あたりの提供量が50mlと少ないため、より多くのビールをじっくりと味わうができます。
また、専門家によるセミナーやテイスティングツアーなども催されます。
テイスティングがわかるようになると、ビールがもっと楽しくなるはず!
ビールに関する知識がより深まること間違いなしです。
クラフトビール初心者から上級者まで楽しむことのできるおすすめのイベントです。
【公式サイト】http://www.beerfes.jp
【Twitter】https://twitter.com/beerfes
5. スノーモンキービアライブ
国内トップレベルのブルワリーと豪華アーティストが集結するビールと音楽の祭典です。
毎年3月の下旬に長野県の志賀高原にて開催されており、雪の積もる季節にも関わらず多くのクラフトビールファン達が参加しています。
このイベントだけのために仕込まれたスペシャルなビールや、ブルワリーとのコラボビール、新商品が先行お披露目されるなど、激レアなビールばかりが登場します。
ステージでは国内の人気アーティストの生演奏があり、音楽に身を任せながら特別なビールを楽しむことができます。もちろん美味しいフードの出店もあります。
イベントは2日間に渡って開催され、3部にセクションが分かれています。
それぞれのセクションのチケットを購入するとビールが飲み放題となります。
年々チケットの売り切れが早まっていますので要注意です。
志賀高原はスキー場や温泉、ニホンザルの生息地など観光地としても有名です。
ビールのイベントの合間に志賀高原の自然も一緒に楽しみましょう。
【公式サイト】http://snowmonkey.jp
【facebook】https://www.facebook.com/Snow-Monkey-Beer-Live-132544613563361/
【Twitter】https://twitter.com/drunksnowmonkey
ビアフェスって夏のイメージがあったけど、冬や秋にも催しているんだね!
僕も行ってみたいなー
まとめ
以上、クラフトビールに関する基礎知識のご紹介でした。
クラフトビールの世界はほんとうに奥深く、私たちもまだ知らないビールが世の中にはたくさんあります。
今回のこの記事を通してクラフトビールに少しでも興味を持って頂けたなら、そしてクラフトビールを好きになってもらえたら、とても嬉しく思います。
当WEBメディアCRAFT BEER TIMESでは多種多様なこのクラフトビールの世界に関する情報を日々発信しております。今後とも是非チェックして頂ければ幸いです!
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それではまたお会いしましょう!