黒ビールはなぜ黒い?オススメのビールや味わいの特徴を紹介します!
更新日:2020.09.02 / 投稿日:2019.12.20
こんにちは!
ホッピーなビールもいいけど麦の風味が強いビールも最近好きになっているCRAFT BEER TIMES編集部の熊倉です。
寒い時期になってくると香ばしくてコク深いビールが飲みたくなってきますよね。
そんな時におすすめなのが黒ビール。
コーヒーやカカオのような落ち着く香り、ほのかな酸味と甘味、そしてちょっぴり焦げたようなほろ苦さ…
今回はそんな黒ビールについて様々な角度から解説していきたいと思います。
- 黒ビールはなぜ黒いのか?
- オススメの黒ビールが知りたい!
- 黒ビールに合う料理って何があるの?
これを読めばこんな疑問がすべて解決しちゃいます。
さあ、あなたもこれを読んで黒ビールマスターになりましょう!
黒ビールとは
黒ビールとは、その名の通り黒い色をしたビールです。
濃色ビールの一種で、その中でも特に黒色に近いものが黒ビールと一般に呼ばれています。
ビールを色で分類する場合、淡色ビール・濃色ビールの2つに大きく分けることができます。
主要なビアスタイルを2つの色で分類したものを以下にまとめてみました。
- 淡色ビール
-
・ピルスナー
・ゴールデンエール
・ヴァイツェン
・ベルジャンホワイト
- 濃色ビール
-
・ポーター
・スタウト
・ブラウンエール
・アンバーエール
・ボック
・バーレイワイン
このように色別にビアスタイルを分けてみますと、
- 淡色ビールは爽やかな味わい
- 濃色ビールはコク深い味わい
そんな共通の特徴が見えてきますね。
ビールの色はどのようにして決まる?
ビールの色に最も影響を与えるのは、使用する「麦芽(モルト)の種類」です。
そして、麦芽の焙煎具合もポイントになります。
ビールの原料である麦芽の生成には、焙燥(ばいそう)・焙焦(ばいしょう)という工程があります。
- 焙燥
-
温風をあてて麦を乾燥させる工程。低温からゆっくりと90度前後で行われ、ビール醸造のベースになる麦芽となる。
- 焙焦
-
焙燥した麦芽を、ロースターで焦げ目を付ける工程。120~230度前後の高温で行われる。ロースト麦芽とも呼ばれる。
黒ビールには焙焦した黒みがかった麦芽が使用されています。
この色の濃い麦芽を使うことによって、その色がそのままビールの色に映し出されているのです。
主なロースト麦芽には以下のものがあります。
クリスタルモルト
120~160度で焙焦。麦色~褐色。糖分がカラメル化するため、ビールに香ばしさと甘味を与える。焙焦温度が上がるにつれ、色と風味が強くなる。
チョコレートモルト
200~220度で焙焦。濃い茶色。その名の通りビターチョコのような風味を持つ。
ブラックモルト
220度で焙焦。黒く焦がされた麦芽。焦げや燻製の風味を与える。
ローストバーレイ
麦芽化していない大麦を220~230度で焙燥。焦げによる苦味が特長。伝統的なスタウトに使用される。
ロースト麦芽だけでは造れない
黒ビールにはロースト麦芽が使われますが、ロースト麦芽だけで黒ビールが造れるわけではありません。
麦芽は焙燥を経て色味と香ばしさを増しますが、逆に麦芽の持つ酵素力は失われていきます。
麦芽の酵素がなければ、ビール醸造における麦の糖分を引き出す「糖化」という工程ができなくなるので、酵素力を持ったベースの麦芽にロースト麦芽をブレンドすることで黒ビールは造られるのです。
ビールの作り方について詳しく知りたい方は、下記の記事も読んでみてください。
黒ビールの特徴
黒ビールの色は、焙煎された麦芽によってもたらされているというのがわかりましたね。では、その黒ビールにはどの様な特徴があるのでしょうか?
主な3つの特徴をご紹介します。
特徴その1. ロースト麦芽の香り
黒ビールの大きな魅力のうちの一つは香りです。
ロースト麦芽ならではの豊かで落ち着いた風味はなんともたまりません。
黒ビールの香りは様々な表現ができますが、一般的によく言われている表現には下記のようなものがあります。
- コーヒー
- キャラメル
- ナッツ
- カカオ
- チョコレート
- 黒糖
- 燻製
- しょう油
- 焦げ
いかがでしょうか?なんだかおやつの時間を想像させるような香ばしくて甘い香りが多いですね。
黒ビールを飲むときには、このちょっと大人な香りたちをゆっくり楽しんでみてください。
特徴その2. コクのある味わい
黒ビールの味わいには、スッキリとした酸味と焦げたような苦味の特徴があります。
ロースト麦芽を使ったビールには、わずかですが酸味が感じられます。
強い酸味ではなく、コーヒーに感じるような穏やかでシャープな酸味です。
また、ホップの爽やかな苦味とは異なる、少し焦げに似た香ばしい苦味も感じることができます。
このロースト麦芽による酸味と苦味が、黒ビールの味わいにコク深さを与えているのです。
コーヒー豆を焙煎すると酸味と苦味が出るように、麦芽もローストすることで同じようなことが起きているのかもしれません。
特徴その3. 甘いものに合う
黒ビールはデザートや甘い料理との相性が抜群です。
例えばショートケーキやドーナッツ、バニラアイスなどとピッタリです。
ポイントとなるのは「ロースト感」です。
お菓子の甘みと黒ビールの焦げた苦味がお互いの味わいを中和しつつ、いいバランスにしてくれます。この組み合わせはホップの爽やかな苦味ではあまりマッチしません。
基本的にコーヒーに合うもの全般と黒ビールは合わせることができます。
スイーツ以外だと、香ばしくて甘辛い味付けの料理とも相性はいいです。
焼き鳥のタレやすき焼きなど、タレが焼かれることで生まれる香ばしさが黒ビールのロースト感と上手くマッチします。
黒ビールのビアスタイル
黒ビールには、すっきりキレのあるものから、時間をかけてじっくり味わうタイプなど様々な種類があります。
ここではそんな黒ビールのビアスタイルについてご紹介します。
ポーター
イギリス・ロンドン発祥の上面発酵タイプの黒ビールです。
ロースト麦芽を使用するため色は濃く、コーヒーやチョコレートのような香ばしさを感じることができます。
ポーターの起源は18世紀初頭。
古くなって酸化してしまったブラウンエールを、新しいブラウンエール、淡色のペールエールとブレンドして提供されていた「スリースレッド」というビールが評判になりました。
そのビールをロンドンのパブのオーナー、ラルフ・ハーウッドがブレンドに頼らずその味のビールを再現します。このビールは「エンタイア」と名づけられましたが、特にロンドン市場の配達人に好まれたため、次第に「ポーター(運び屋)」と呼ばれるようになりました。
当時のポーターは茶褐色程度の色合いでしたが、後述のスタウトの人気の高まりからポーターも黒色のビールへと変化していきました。
オススメのポーター
スタウト
ポーターよりも力強い味わいと高いアルコール度数が特長の、アイルランドで生まれたビアスタイルです。
有名な黒ビールである「ギネス」の創業者、アーサー・ギネスによってこのビールは造られました。
ビールづくりの原料である麦芽に課せられた税金を節約するために、ギネスは麦芽化していない大麦をローストして原料に使用しました。
するとそのビールは、ブラックコーヒーのような強い苦味とドライですっきりとした味わいになりました。これが大評判となり、アイルランド以外の国でも広く飲まれるようになりました。
始めはポーターよりも強いという意味を込めて「スタウト(強い)・ポーター」と呼ばれていましたが、その後は単に「スタウト」と略されるようになります。
おそらくスタウトは現代のクラフトビールブームで最も人気な黒ビールでしょう。
アメリカを始めとしたクラフトブルワリーで、様々なスタウトの進化系ビアスタイルが誕生しています。
派生スタイルとしては、甘さを加えた「ミルクスタウト」や「チョコレートスタウト」、味わいとアルコール度数を高めた「インペリアルスタウト」、ウイスキーやラム酒の樽で貯蔵した「バレルエイジスタウト」、お菓子のような風味と甘さを出した「ペストリースタウト」などがあります。
オススメのスタウト
スコッチエール
その名の通り、スコットランドで生まれた濃色ビールです。
色は赤褐色から暗い茶色くらいまでで、ホップは控えめでモルトの特長が非常に強く出ています。アルコール度数のは6~8%と高めです。
もともとはベルギーへの輸出向けの商品として造られていたため、アルコール度数が高くなっています。
スコッチエールの類似スタイルに「スッコティッシュエール」があります。
この2つの大きな違いはアルコール度数で、スコティッシュエールは2~5%程度のものがほとんどです。
スコティッシュエールはさらに細かく、ライト・ヘビー・エクスポートとアルコール度数のレベルに応じて分けられます。
スコッチウイスキーという上等なハイアルコールのお酒があるお国のためか、ビールは軽い味わいのスコティッシュエールのほうがスコットランドで広く親しまれています。
デュンケル
ミュンヘンが発祥の濃色ラガータイプのドイツビールです。
暗い茶褐色の外観で、モルトの香ばしさとほのかな甘味が特長のビアスタイルです。
濃い色をしていますが下面発酵ビールのため味わいはすっきりとしています。
とはいえピルスナーなどの黄金色のビールよりもコクが感じられ、食事とのペアリングの幅も広がります。
名前の由来はドイツ語からきており、デュンケルは「濃い・暗い」という意味です。
オススメのデュンケル
シュバルツ
ドイツ・ミュンヘンの北部にあるクルムバッハというまちで古くから造られている、黒色のラガービールです。
ほとんど光を通さないほどの黒い色をしています。デュンケルよりもローストの香りが強く、味わいはすっきりとキレがあります。
黒ビールの香りは好きだけど甘さを感じる味が苦手、という方はぜひシュバルツを飲んでみてください。黒ビールのイメージが変わるはずです。
また、シュバルツはドイツ語で「黒」を意味します。
ドイツの文豪ゲーテが愛したビールとしても有名です。
オススメのシュバルツ
ボック
ドイツのアインベック地方発祥の伝統的な高アルコールビールです。
モルトの独特な甘いコクが個性的で、どっしりとした口当たりながらも飲みやすいのが特徴です。ラガービールに分類されますが、甘く濃厚なフルーティーな香りもあります。
明るい色のものがありますが、ほとんどは濃色の外観をしています。
このスタイルの名称は、もともとは発祥地の「アインベック」が訛って「アインボック」と呼ばれるようになり、それが短縮されて「ボック」となったようです。
ボックはドイツ語で雄ヤギを意味し、ボックを飲むと雄ヤギのように元気が湧いてくることからその名が付いたそうです。
ボックには派生スタイルがあり、よりアルコール度数とモルトを強めた「ドッペルボック」、ビールを凍らせてから水分を取り除いてビールの濃度をさらに高める「アイスボック」などがあります。
オススメのボック
ラオホ
ドイツのバイエルン地方にあるバンベルグという都市で造られているビールです。
ブナの木で1日以上かけて燻製した麦芽を使用した個性的なスタイル。
濃色ですっきりとした味わいですが、燻された麦芽からくる燻製の香りが非常にユニークです。
ちなみにラオホはドイツ語で「煙」を意味します。
燻製ビールなのでペアリングも燻した料理と良く合います。
炭火焼きの鶏肉や、スモークチーズやハム、ソーセージ、牡蠣などとは相性抜群です。
オススメのラオホ
CRAFT BEER TIMES編集部が選ぶオススメの黒ビール
ここまで読んだ方は黒ビールについてもうかなり詳しくなって頂けたのではないでしょうか?
ということで最後はオススメの黒ビールをご紹介します!
気になったものがあれば是非お試しください!
ヤッホーブルーイング 東京ブラック
麦芽の甘味と香ばしさのバランスがとてもいいポーターです。
コーヒーのような酸味や後味の焦げに似た苦味も味わいに深みを与えています。
比較的手に入れやすい国産黒ビールなので、まだ飲んだ事のない方は是非!
箕面ビール スタウト
ビターですっきりとした味わいのスタウトです。
世界的なビアコンペティションで数々の受賞実績がある、国内外から大きな支持を受けているビールです。
ビターチョコや麦茶のような香りと、滑らかでキレのいい味わいが素晴らしい!
スタウトの中でもすっきりとスムースな仕上がりのドライスタウトタイプのビールです。
アサヒ スタウト
知る人ぞ知る、あのアサヒビールが製造しているスタウト。スーパードライとは一線を画した仕上がりとなっています。
カラメルや黒糖、醤油の香ばしい香りと、ずっしり口の中に感じる甘味とアルコール感がとても強烈です。それなのに価格は通常の大手メーカーのビールとほぼ同じというコスパの良さ!
流通量は少なめなので見かけることは少ないかもしれませんが、見かけたらぜひ飲んで欲しい1本です。
常陸野ネストビール スイートスタウト
香ばしいロースト麦芽の香りと、なめらかな甘さが特長のスタウトです。
原料に乳糖が加えられており、それによってミルキーな甘さがビールに与えられています。とはいえ、甘ったるいだけではなく、香ばしさと苦味がしっかりとしたビールの輪郭をつくり、その中でやさしい甘さが引き立った味わいに感じられます。
スイーツとの相性も抜群です。
独歩ビール デュンケル
トーストやビスケットのような香ばしさが感じられるデュンケルです。
ホップの苦味は弱く、麦芽の甘い風味と軽いロースト香が強く感じられます。
ラガービールの切れ味も持ち合わせていますので、程よい飲みやすさも持ち合わせています。
麦芽のふくよかさが好みの方におすすめのビールです。
COEDO 漆黒
すっきりとした切れ味と香ばしさが感じられるダークラガーです。味わい的にはシュバルツに近いスタイルだと思います。
真っ黒な外観で、ラガービールらしいキレの良さが楽しめます。ロースト麦芽の香ばしさや苦味が、ドライなビールの中に潜むわずかな甘味を浮き上がらせます。
すっきりした黒ビールが飲みたい方はぜひコチラを。
ヴェルテンブルガー アッサム・ボック
ビターなコクが感じられる、本場ドイツで造られるボックです。ボックの中でも濃厚さを増したドッペル・ボックに分類されます。
茶褐色の暗い色調で、カラメルやレーズンのような濃厚な香りがあります。味わいは芳醇なモルトの甘さと凝縮されたエスプレッソのような香ばしさが感じられ、リッチなコクを楽しむことができます。
ゆっくりと時間を掛けて飲みたくなるビールです。
富士桜高原麦酒 ラオホ
スモーキーな香りがたまらないラオホビールです。
ブナのチップで燻製した麦芽がしようされており、その香りがビールにも強く感じられます。始めて飲んだ時にはなんじゃこりゃ!?というインパクトを受けました。
味わいは意外にもすっきりしていて、スモークの香りが好きな人であればハマってしまうかもしれません。
飲むときには必ず燻製したおつまみを用意してください。その相性はいわずもがなですが、めちゃくちゃに合います!
箕面ビール ボスざるIPA
ロースト麦芽を使用した黒いIPAです。ハイブリッドなビアスタイルで、カテゴリとしてはブラックIPAに分類されます。
IPAのホップの香りにロースト麦芽の香ばさが加わり、爽やかながら深みのある新しい香りを感じることができます。
ユニークな面白いスタイルですので、ぜひ一度体験してみてください。
まとめ
今回は黒ビールの世界についてご紹介させていただきました。
最後に記事の内容を簡単にまとめますと、
- 黒ビールはローストした麦芽の色が移って黒くなっている
- ロースト麦芽によって香ばしさとコクが生まれる
- 黒ビールにはスッキリしたものからコク深いものまで様々ある
この3点を覚えて頂けたらもう完璧です!
普段はあまり黒ビールを飲まないという方は、この機会にぜひチャレンジしてみてください。
黒ビールの甘い感じがイヤなんだよね~という方は、シュバルツやドライスタウトを!
なんかいまいち引っかからないんだよな~という方は、ドッペルボックやインペリアルスタウトを!
スタウトを始めとして黒ビールは、現代のクラフトビールブームの中でIPAのような大きな進化を遂げています。
クラフトビール好きとしては黒ビールについてもおさえておきたいところ!
面白い黒ビールを見かけたらぜひ飲んでみることをオススメします。
そのうちに、底なし沼のような黒ビールの漆黒の世界にハマっちゃうかも…?
それではまた!